働く人の権利

 最近の労働界は、リストラ、終身雇用制の崩壊、定年延長、年俸制の問題、労働時間短縮、育児・介護休業など種々の法的諸問題をかかえており、失業者の増加もあいまって、まさに激動の時代といえるでしょう。
 会社の人事労務担当者はもちろんのこと、職場の各管理職や労働組合の役員なども常に社会の情勢に目くばりをして、種々の法令や通達、判例、各企業の人事政策などについて新しい知識を吸収しなければならない時代となりました。私たち弁護士にとっても、常に自己研鑽をしていかないと、正確な知識を伝えることが困難になっています。 しかし、これらの新しい知識や情報というものは、本来、基礎的な知識・理解の応用編とでもいうべきものであり、それらの基礎的な知識・理解がないのであれば、その持つ意義が正しく理解できないばかりでなく、逆に有害となることすらありえます。
 例えば、ある新聞で、「残業拒否で懲戒解雇有効との最高裁判例が出た」という記事が掲載された場合、基礎的な知識・理解がなければ、1回でも残業せずに早く帰れば当然懲戒解雇できるものと考えてしまう方もいるわけです。 そういう誤解をなくすためにも、労働法を勉強するにあたっては、やはり、労働基準法、労働組合法などの基本法をマスターすることが必要です。

  本書は、労働基準法について、簡潔ではありますが、わかりやすく解説してみました。 正確を期すならば、規則、通達、判例などを多く引用すべきところでも、あえて引用せず、できるだけ読みやすく書いてみました。そのため、ベテランの人事・労務担当者からみると物足りないと思われるところもあると思いますが、その方でも、おそらくは、何点かについては、正確な知識をお持ちでないと思います。 その意味では、ベテランの人事・労務担当者であっても、一読していただければ、お役に立つと信じております。 本書が、いろいろな方々に利用されることを希望してやみません。

書誌情報

発行年月日1996/4/1
著者外井浩志
出版社とりい書房