新・労働法実務Q&A パートタイマー・外国人雇用

 本書はパートタイマー及び外国人労働者に関する法律問題の解説書である。新・労働法実務Q&Aシリーズの一冊であり、シリーズ三冊目の刊行となる。 平成大不況の下、完全失業率が過去最高となるなど雇用状況が落ち込んでいるなかで、正社員以外のいわゆる非正規労働者、とりわけパートタイマーの比率は確実に増加している。この傾向は今後ますます強くなるであろう。
 これまでの労働法は正社員を念頭に置いて制定され、解釈され、運用されてきたと言えるが、今後はパートタイマー等を中心とした労働法の制定、解釈も必要になることも考えられる。 そうした観点からは、現行のいわゆるパート労働法は実質上はほとんど内容がない法律と言ってよく、また労働法全般の解釈についても依然として正社員中心の考え方で行われているのが現状である。しかし雇用形態、就労形態の多様化が進むなかで労働法のあり方も変化を迫られていることは間違いない。

 本書では、パートタイマーについて労働法上、問題となると思われることを、極力、具体的にQ&A方式でまとめてみた。正社員とパートタイマーとの賃金格差をめぐっての最近の判例を紹介するなど、今日的テーマを取り入れた他、社会保険や税務関係についても頁を割いた。ただ、あれもこれもと網羅的に取り上げたわけではなく、実務に必要と考えられる項目に絞って重点的に構成したつもりである。なお、パート労働法については、現在、行政当局において見直しが進められているが、本来はパートタイマーの社会保険、税務関係も含めた総合的な労働法が整備されればよいと思われる。
 本書のもう一つのテーマは外国人労働者の問題である。昭和の末期から平成2、3年ころまで外国人労働者は未曾有の人手不足を背景に急激に増加した。その後は、急激に増加したことによる種々の不都合の後始末的処理問題が話題になったきらいがあるが、しかし現在もなお外国人労働者は数多く存在しているし、不法就労も依然として少なくない。今後、貴重な労働力として外国人労働者はますます必要とされるだろうが、その前提としてクリアーしておかねばならない法的問題は多い。本書では、従来から問題とされてきたことを含めて、外国人雇用に必要な法的知識を整理して解説した。決してわかりやすい内容ではないかもしれない。しかし、外国人を雇用する際の必須知識を実務に即して取り上げたので、必ずや参考になると思われる。 企業環境の不透明さが続くなか、従来型の正社員中心の終身雇用システムは大幅な見直しが求められている。前述のように、パートタイマー等の非正規労働者はさらに増加するであろうし、規制緩和により外国人労働者の雇用もますます進展するであろう。本書が、こうした動向に的確に対応するためのお役に立てば幸いである。

書誌情報

発行年月日1998/04
著者外井浩志
出版社生産性出版