よくわかる!事業再編 雇用流動化の人事と労務
今回、労働法の新しい諸問題についてまとめて執筆することを決め、出来あがったのが本書である。ここ数年、平成大不況の影響からか、企業の業務の効率化、経費の削減の必要性から、様々な観点から労働問題への影響が出てきている。新しいところから言えば、会社分割による労働契約承継法、新裁量労働制、派遣法・職安法大改正、労基法大改正、男女雇用機会均等法の大改正、介護休業の施行、60歳定年の義務づけなどの法制度面や、実態面としての執行役員制度、年俸制度、アウトソーシング、人事制度・賃金制度の大幅見直し、パート労働者の雇用の増大、特にベテラン社員のリストラ等がある。これらは一見、バラバラで無関係に見えるけれども、よく考えると、前述のような企業のスリム化(経費の削減)、業務の効率化に根ざしている点等は共通のところが多い。結局、これまでの人事・労務制度のひずみが一気にふき出してきているといってよいだろう。
このように世紀末から新世紀へと移りかわるにあたって、労働問題も急速に変化しつつある。おそらくはIT革命が進行していく中で、さらに一層、アウトソーシングや在宅勤務なども進み、労働形態も大きく変わるであろう。企業も、その大きな流れの中で時代に遅れることのないように人事・賃金制度を変更して、それに沿った労務管理を行わなければならない。そのためには今後とも絶えることのない研鑽が必要になるのであり、その一助として本書が利用されれば幸いである。
また、労働者や労働組合も既存の労使慣行や既存の労働条件にあまりこだわることなく、新しい形態の労働に立ち向かい、そして、大きな成功をおさめてほしい。時代の変革の時期には、没落する者も多いと同時に、一気に飛躍する者も出てくる。時代は確実に変わっているのだから、その流れを見失うようなことのないようにすべきである。
書誌情報
発行年月日 | 2000/12/25 |
著者 | 外井浩志 |
出版社 | 第一法規出版㈱ |