知っておきたい職場のルール 健康・安全・衛生と補償・賠償 第2版

 本書の初版が発行されたのが平成13年12月であり、はや5年が経過しました。この間の安全衛生・健康問題の法的な規制や行政の指導の進歩は著しく、リスクアセスメントの考え方を導入した労働安全衛生法の改正や過労死・過労自殺の裁判例の集積など、格段に進歩しています。他方で、アスベスト問題にみられるように古くて新しい問題も大きくクローズアップされてきました。
 ここ数年、労災事故による死亡は減少し、平成17年には年間の死亡者数は約1,500人に減少していますが、他方で有害物質による爆発事故、化学物質による中毒被害、アスベストによる工場付近の住民被害などの重大災害も多く、たんなる労災事故ではなく、公衆を巻き込んでの公衆災害もしばしば起きています。今後は有害な化学物質、爆発性のある化学物質の規制など、労災問題も環境的な問題と深く関わることになるでしょう。平成18年4月施行の労働安全衛生法も一部リスクアセスメントという考え方を導入し、新しい展開をしています。
 このように、企業の関わる安全衛生問題は、技術の開発や営業など他の分野と全く独立した分野から、広い意味での社会的責任として共通項に含まれる分野と位置づけられるように格上げされてきたと思われます。つまり、安全衛生問題も企業のコンプライアンス(法令遵守)の要請から、より厳しい法的責任、広い社会的責任が求められる時代になってきたといえます。そして、安全衛生・健康管理措置をとらない企業に対しては、労働者は公益通報をすることができることになっています。これまでよりいっそう、企業は安全衛生・健康管理の措置を充実させると共に、さらなる向上を目指していかなければならない社会的責任を負っているといえます。

 今回、本書を改訂するに当たっては、今述べたような視点を盛り込むように注意しました。今後も、これまでの平板的な安全衛生の理論からバージョンアップした立体的な理論を目指さなくてはならないと考えております。

書誌情報

発行年月日2006/11/10
著者外井浩志
出版社中央経済社