見る・読む・わかる入門の法律労働法のしくみ

 昨今の労働事情は、平成大不況を反映し芳しいものではありません。失業率5.3%(平成13年10月末現在)という高い数字が物語るように、企業のダウンサイジング化にともなうリストラと、労働条件の不利益変更が頻繁に行われているのが現状です。
 戦後、これほど長い不況が続いたことはなく、労働者としては、不況に耐えられるだけ耐えるしかないのかもしれません。
 もちろん、労働条件が切り下げられるのは、労働者にとってありがたいものではありません。しかし、「労働者と使用者である経営者のそれぞれの利益の調整をする」という労働法の原点ともいうべき問題について、基本に立ち返って考えるべき絶好の機会と考えることもできます。
 実際のところ、企業も構造的な不況に苦しみ、名門といわれる企業でさえも、赤字経営を余儀なくされています。リストラや労働条件の不利益変更が、不況下で企業を存続させるために、やむをえない措置であることも多いでしょう。その反面、経営者たちは、経済の安定成長時代とはまったく異なる今日の情勢下で、雇用の確保をはかるべくあらゆる手段を実行に移しているのも、また事実です。

 本書は、これら厳しい環境下で労働者と使用者である経営者が知っておくべき、基本的な労働法のしくみについて、わかりやすい説明を試みたものです。読者の皆さんが、本書によって労働法の基本を押さえ、身の回りの労働問題に興味を持つことができたなら、これに勝る喜びはありません。

書誌情報

発行年月日1999/04
著者外井浩志
出版社日本実業出版社