基礎から学ぶ実践労働法
本書は、労働新聞に平成14年1月から12月まで1年間47回にわたって連載したものを、一部改訂し加筆したものである。1年間、毎週原稿を書くということは初めての経験であったが、労働新聞社編集局のご厚意により自由に思いつくままに書かせていただいたせいか、それほど苦痛ではなく、意外に早く終了した。
私事で恐縮であるが、私は、事務所の机の上で原稿を書くことは皆無に近く、自宅で深夜に書くか、出張先のホテルか、喫茶店か、新幹線または飛行機の中で執筆しているが、平成14年は常に鞄の中に原稿用紙を入れて、時間がある度に喫茶店、新幹線、飛行機の中でこの原稿を書いていた。その意味では出張先で遊んだり無駄な時間を過ごした記憶もほとんどなく、極めて充実した1年であったと感じている。
いずれの場所で執筆するにしても、せいぜい、労働関係法規集を携帯しているくらいで労働法の教科書や判例集は持っていないので、自分の記憶に基づいて自己の勝手な整理の中で書いていることがほとんとであり、見直し時に詳しい判決文、通達文の引用をしていたので、空白を常に用意しながら執筆した。これまでは原稿を書くときには、空白が埋まっていかないと気持ちが悪くて先に進めないということがあったが、この原稿でそのような気持ちでいると一向に原稿が進まないので、否応なしに空白は後で埋めることにせざるを得なくなり、変わった意味での忍耐力も付いたような気がする。
本書は、採用から退職までという体系書ではなく、書きやすい順に思いつくところから書いたので、各項目の順序に必ずしもこだわらない内容になった。また、内容的にもあらゆる問題にまんべんなく触れているわけではなく、関心を持ったところは詳しく、あまり関心のないところには触れていない分野もある。しかし、労働問題を考えてみると、現実の問題は採用から始まって退職・解雇に終わるわけではない。また、あらゆる分野で問題がまんべんなく起こるものでもなく、アットランダムに自在に問題がは起こってくる。従って、労働法の本も必ずしも順序通りに書かれている必要はないし、それぞれの分野に濃淡があっても良いと思う。要は、利用しやすければそれでよいと思っているが、今後、本書がどのように利用されていくか、その評価をお聞きしたいと思っている。
書誌情報
発行年月日 | 2004/12 |
著者 | 外井浩志 |
出版社 | 労働新聞社 |