事典 親しみやすい就業規則の作り方・読み方
親しみ、活用される就業規則を 長びく平成不況の出口が見えかけた昨今、阪神大震災という大災害が発生し、多くの死傷者を生み、未だに景気の好転の見通しすらたっていません。企業は、いっそう、自らを引締めて生存競争を繰り広げなければならない状況です。他方、東京の地下鉄サリン事件、警視庁長官襲撃事件など、社会秩序の根本をゆるがすような事件が頻発し、私たちは社会秩序の維持の重要性を再認識し、安全というものの重要性を痛感させられます。
企業社会・労使問題においても、これらの社会情勢は大きな影響を及ぼすことが予想されます。まず、企業はよりいっそうの効果的経営を考えなければならず、他方、労働者の自らの生活を守ろうとする防衛意識は強度のものとなり、生命・身体の安全、健康の管理についても企業に対してその保障を求めることになるでしょう。この双方の要求は必ずしも二律排反ではないにしろ、衝突する可能性が高く、企業と労働者の関係にもいっそうの厳しさが要求されてきます。
日本の企業社会は、欧米諸国に比べてウエットな部分が多く、未だにドライであるべき契約社会の実態には程遠いと言われています。ウエットそのものは、良い面も悪い面もあるのですが、労使関係が厳しくなってくると、今まで、曖昧にすまされてきたウエットな部分も、次々と問題とならざるを得なくなってくるでしょう。要は、今まで、労働慣行とか労使の阿吽の呼吸と言われる部分が次第に表面化していかざるを得ないのです。
本書は、職場の憲法と言われている就業規則について目を向け、就業規則の役割とその規定内容の意義、その作成の仕方について言及してみました。前述のウエットな部分を明確にする方法としては、労働契約書の作成・労働協約の締結などの方法もありますが、広く職場の秩序を定め、労働条件を保障するものとしては、何と言っても就業規則ということになるでしょう。就業規則の持つ重要性を再認識する必要性があると思います。 しかしながら、企業内の労働者で、就業規則に慣れ親しんでいる者は、残念ながら一握りの数しかいないのではないでしょうか。労働者側の怠慢もその原因ですが、無味乾燥な文章で難解な内容しか規定してこなかった企業の経営者側の姿勢にも問題があったことも事実です。
今後は、労使共に、就業規則に親しみ、普段から活用しやすい内容にしていくことの工夫が必要です。本書は、若干ではありますが、その点に言及しています。本書が労使双方にとって利用されることを希望してやみません。
書誌情報
発行年月日 | 1995/05 |
著者 | 外井浩志 |
出版社 | 中央経済社 |