得するパートの働き方

 女性パートタイム労働者は近年、大幅に増加しています。働く人全体に占める短時間雇用者の割合は18%。このうち女性は7割を占めています。今後も、女性や高齢者が働きやすい就業形態であるパートタイム労働は、ますます重要になるものと考えられます。一家のご主人の職場がリストラによってますます狭くなり、残れたとしても給与は頭打ち、残業手当がどんどん減っていく時代にあって、奥さんの収入が家計の二本柱の一つとならざるを得ません。
 企業の側も、先行き不透明な時代にあって、正社員の雇用を守るためのクッション要員としてパートタイマーを重視しており、もはやパートタイマーを使わない経営は成り立たなくなっているといっても過言ではありません。 しかし、その就業をめぐってはいろいろな問題点があるのも事実です。パートタイマーという立場上、正社員と比較して簡単な手続きで採用されており、労働条件においても正社員との間にさまざまな格差を生みやすくなっています。 政府もトラブルを予防するために、平成5年には「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パート労働法)を制定し、同時にパートタイム労働指針を定めました。 しかし、そのわりには、パートタイマーを雇う側の総務・人事担当者向けの解説書は出ていますが、雇われる側、働く女性の側からの本はほとんどないのが現状です。 そこで、本書ではパートタイマーとして働こうとしている人、実際に働いている人向けに、パートタイマーとしての心得、法的な問題点と解決法などをやさしく解説しました。少しでも職場を働きやすく、居心地のいいところにできれば幸いです。

 「パートタイマー」というと、サラリーマンなどの奥さんが主婦業の合間を利用して、週のうちの何日か、それも1日数時間だけ働いているもの・・・と思っている人が多いのではないでしょうか。たしかに、そういう人をパートタイマー(あるいはパートタイム労働者)と呼ぶことに問題はありません。ところが、企業によっては、それを同じような条件で雇った人を人を「パート社員」や「臨時社員」あるいは「契約社員」などと呼んでいることがあります。単に「アルバイト」ということもあります。そういう人たちはパートタイマーではないのでしょうか。
 実は、現在、法律上で「パートタイマーとはこれこれの労働者をいう」といった厳密な規定はありません。ですから、パートタイムで雇った人をどんな名称で呼んでもかまわないことになっています。それはあくまでも雇う側の自由です。しかし、現実にパートタイムで働く人がいる限り、何らかの定義が必要になります。そこで一つの目安となるのが、労働時間です。ふつう正社員として雇われた労働者は、会社の所定の労働時間をフルに働かなければなりません。この労働時間をフルタイムとすると、それよりも短い労働時間はパートタイムということになります。そこで、パートタイマーとは、まず「フルタイムの労働者よりも短い労働時間で雇われている人」と定義することができます。 ただ、労働者の中には、正社員として雇われたわけではないのに、労働時間は正社員と同じという人もいます。そうした労働者は、雇用形態の違いで判断するのがするんが一般的です。
 現在、わが国の雇用形態は、いわゆる定年までの雇用が保証されている(すなわち終身雇用)正社員と、雇用保障はないが雇用が継続される非正規社員の二つ分けることができます。非正規社員の場合、通常は入社試験などがなく、たとえば、面接だけといったごく簡単な採用手続きで雇用されています。もちろん労働者自身も雇用保障がないことを承知しているといえます。そうした観点から見ると、賃金などの労働条件の面で非正規社員が正社員とは異なった形で扱われても問題はないといえます(法的=判例にも認められています)。この非正規社員の中にパートタイム労働者もいれることができるでしょう。
 これらの要件をまとめると、パートタイマーとは、①正規の手続きを経て雇用された正社員ではない労働者であること、②正社員と比較して短時間労働者であること、の両方に該当する労働者と定義することができるでしょう。本書もまた、その視点で展開しています。

書誌情報

発行年月日1999/01
著者外井浩志
出版社双葉社