新・労働法実務Q&A 改正 労働基準法
本書は「新・労働法実務Q&Aシリーズ」の最終巻として、労働法の基本法である労働基準法の実務書として著したものであるが、労基法は内容が多岐に亘っていることでもあり、シリーズの他の本に比べやや分量が多くなった。本シリーズの第1冊目は『採用・退職・解雇・定年・懲戒』で、1997年7月の刊行であったから、シリーズの完結までに2年二か月を要したことになる。
シリーズ全7冊のうちの2冊は小代順治弁護士の著書であり、労働関連法規の中でもっとも難解とされる賃金と労働時間の分野を引き受けていただいた。そのため、著者としては、比較的順調にこれまでの4冊を書き上げることができた。 しかし今回、本書を書き上げるにはかなりの努力を余儀なくされた。
というのは、まず、労働基準法の基本書と呼べる書籍は決して多くはなく、どのようにまとめるかのイメージが湧きにくかったことがある。もちろん、弁護士や経営コンサルタントが書いたノウハウ本や改正部分だけに焦点を当てた本などは必ずしも少なくない。しかし、労働基準法の定める内容を網羅的に解説しているのは、有泉亨教授著の『労働基準法』(有斐閣)、安西愈氏著の『労働基準法のポイント(新訂版、上・下二巻)』(財団法人中小企業労働福祉協会)などに限られている。他方、労働省労働基準局監修の逐条解説(コンメンタール)があるが、これは詳細にすぎるのが難点である。
第二に、労働基準法のQ&Aである以上、現実の紛争とはなりにくい理論的な分野についても一応は触れる必要があることと、本シリーズの性格上、学術的内容ではなく実務に役立つものでなければならないこととのバランスをどうとるかに苦労した。 さらに、今年(1999年)は、労働基準法の大改正が実施されており、その新制度の内容についての解説も必要となった。とりわけ、時間外労働の限度時間、新裁量労働制(2000年4月施行)、1年単位の変形労働時間制、年次有給休暇の増加などは、かなり難しい問題があるため、相当の紙数を費やして解説した。 本書は、以上のような背景・状況でまとめたものである。
シリーズの他のテーマとは異なり、労働全般に及ぶことに加え、改正部分についての行政指針等がまだ十分ではないことなどもあり、必ずしもすっきりした内容になっていない部分も多い。筆者の力不足もあるかもしれないが、いずれにしろ、労働基準法自体が時代の趨勢を反映して複雑になってきたことも事実である。その意味では、勉強すべき分野が広がるとともに、その内容も難解になってきているのである。このような時代、本書が読者諸氏にとって幾許かのお役に立てばこれに勝る喜びはない。
また、本書を含めたシリーズ収録の各書籍を労働問題の的確な指針としてご活用いただければ幸いである。
書誌情報
発行年月日 | 1999/9/30 |
著者 | 外井浩志 |
出版社 | 生産性出版 |