改正労働基準法対応 トラブルを未然に防ぐための 出向・転籍・退職・解雇等を巡る法律事務

 今回、政経研究所のご厚意で、この本を執筆することになった。
 現在も平成不況は続いており、もはや不況ではなく、これが常態であると考えなくてはならない状況となっている。「底が見えたのでこれからは良くなるはずである」などという事態ではなくなっている。したがって、労務管理も、不況時の一時しのぎではなく、恒常的なものとしての制度改訂をしなければならないことになった。かつての大企業も、その名前だけで何とか経営できる時代ではなく、本気で経営体質を改善していかないと、倒産しかねない時代となっている。
 他方において、労働者にとっても厳しい時代であり、失業率は未だに5%台であり、仕事には就いていても賞与ゼロ、賃下げは当然といった時代である。 このような中で、労働問題も依然として多発しており、いまやどこの企業も、現役の労働者、元労働者、労働組合などから訴えられてもおかしくない時代となっている。「うちの会社は労使仲良くやっているので多少のことがあっても大丈夫です」などと高をくくっていたら、痛い思いをするであろう。
 我々弁護士としても、労働問題については労使共に必至であり、骨身を削るような裁判や交渉が多くなってきている。いやはや、誰もが大変であり、のんびりと余裕で仕事をするなどというのはごく一部の恵まれた者たちであろう。

 本書は、人事異動、派遣、退職、解雇、定年等の最近労働問題として特に脚光を浴びている分野についての解説書である。とりわけ直近の労働者派遣法や労働基準法の改正の内容を踏まえて、詳しく記述した。前述のように、労働問題の頻発化と深刻さから考えると、企業からすれば、労働問題の対応の仕方としては慎重の上にも慎重を重ねるべきであり、法的な裏付けのない行為は極力抑えるべきである。そのためには、解雇はもとより、人事異動を行う前に、是非、どのようなトラブルになったら勝てるのか負けるのか、などを十分に検討したうえで行動して欲しいのである。その意味で本書が利用されることを期待している。 なお、本書では判例や通達を多く引用したが、できるだけ原文のまま掲載している。これは短い要約は不適切であり、性格を期するためである。分かりにくくなった点もあろうが、その点はご理解いただきたい。

書誌情報

発行年月日2004/3/8
著書外井浩志