増補改訂版 労災裁判 1988-2014

 本書は、平成21年7月に発刊したが、それから約6年を経過しており、この度、労働調査会の御厚意で増補改訂を出すことになったのは、大いなる喜びである。発刊後も、毎年、年末恒例の「年末特別企画・今年の労災裁判を振り返る」を労働基準広報に掲載させて頂いており、当初の発刊より7回を経過し相当に判例も積み重なっているので、時宜に対応するために追加し、増補版とした。
 追加したのは、平成20年~平成26年までの7回分であるが、一度(平成22年)は公務についていたので、藤原宇基弁護士に執筆をお願いした経過があるが、それ以外は、私一人で判決を探して紹介した。7回分でも200件余りの判決を紹介したので、合計で約900判決を紹介したことになる。この7年間の傾向としては、過労死、過労自殺関係の業務上・外の判断の判決、損害賠償の判決は相変わらず多いが、やはり、アスベスト関係が増加しているのが特徴と言える。
 今後も過労死、過労自殺、アスベスト関係の訴訟が多いと思われ、傾向はしばらくの間は変わらないと思われるが、パワハラ関係での自殺に至らないメンタル問題の事件も増加傾向にあるといえる。今後はメンタル問題とともにパワハラによる休職・解雇にからんだ問題が増えて来るであろうし、遠い将来は喫煙による健康被害が問題になるものと予想している。

 最後に、今回、本書を改訂するにあたっては、多くの裁判例の出典を付けることにした。本来、本書の読者位の方であれば、その判決の出典くらいは自分で見つけることのできる方々が大半であろうと思っていたが、企業の社員・職員の方々は必ずしもそのような状況ではないかもしれない、もし、関心をもっていただき、その判決に当たっていただけるのであればそれに優る喜びはない。是非、索引と出典を積極的にご活用頂きたい。

書誌情報

発行年月日2015/7/8
著者外井浩志
出版社労働調査会